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小田ゆうあ作「ふれなばおちん」第18話(2) 原作のあらすじ&感想

 

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■会えなくても、他人のフリでも、大事なもの

夏の娘・優美香と彼氏である小牧良の、高校入学式の日、団地の前で写真を撮る夏。夏は最後に自分の携帯電話で良の1ショットを撮影した。そこへ出勤する佐伯が現れ、2人の子供たちのフレッシュさにあてられていると、優美香に“変態”扱いされてしまう。佐伯はいずまいを正すと、夏に向かって「おめでとうございます」と挨拶をし、夏もご近所さんの顔で「ありがとうございます」と返した。

佐伯が立ち去ると、優美香が「意外」と言い出した。いつもであれば、夏の髪型や服装につっこむのに、自分がコーディネートした夏の服装にも絡んでこなかった、と。夏は笑いながら「おかーさんの服なんか眼中にないわよ」と返したものの、心中では“なにもいってくれなかったなぁ”、とつぶやく。そして、おかあさんいくよ、と言われ、夏は歩き出した。

その立ち去る姿を佐伯は、垣根の陰から撮影していたーーーー。

 

 

佐伯が会社でその画像を見ていると、背後から近づいてきた若林に見つかってしまう。こないだ言ったことを忘れたのか、と。例の倫(みち)ならぬ恋の絶対ルール、の話だ。「ハナの下のばしてんなもん見てる姿、誰かに見られたらどーすんのっつーの」「後ろ姿がエロ本とか見てる中学生みたいだわよ」と若林。佐伯は「いーじゃないかこっそり写メ見るくらい…おっかわいーなとか思ってもまじまじと眺めることもできないんだ」と顔を真っ赤にしながら言い返した。その言葉と表情に若林は呆れたような顔をするが、“細心の注意を払って二人だけで会えばいいじゃない、こっそり、密室で、隠れて!ウソついて!コソコソと!”と佐伯に罪悪感を与えるような言葉を選んで告げる。

そう言って立ち去った若林の携帯にメールの着信があったのを佐伯は見逃さない。今度は佐伯が若林の背後からそのメールを覗き見し、“芝居おわったら打ち上げぬけて、飲みにいこうよ、前話した例の店につれてくよ”と、メールを声に出して読む。佐伯の仲間であるシゲと若林がそのような関係になっていることを茶化し、そして“例の店”とはどこかと若林に尋ねると、若林は「しののめ?」と答えた。その店名を聞いた佐伯は「あそこに連れてくってんならあいつ本気だわ。へー。お互いガンバローな~」とさらに茶化すように畳み掛けた。

 

 

帰宅した佐伯は、団地を見上げながら、電気の灯っている上条家を見やった。自分はその部屋に帰っていくわけではない、そのとなりに帰るのだ。昼間は夏の写メを見たりして恋心を募らせていたものの、帰宅すれば現実に戻される。それを思うと、ため息が漏れた。

しかし、郵便受けを覗くと夏からの手紙が。佐伯は部屋に入るまで待てずにその場で開封して読み始めた。帰宅の遅い佐伯の体を心配する文面と、そして今度の佐伯の芝居を見に行く旨が書いてあった。佐伯は軽い足取りで階段を昇ると、上条家の玄関を見た。そして、おやすみなっちゃん、と心の中で言った。

佐伯の家の扉がしまる音を聞いた夏は、佐伯が帰宅したことを感じていた。義行に呼ばれる声に返事をしながらも、夏は玄関に向かってぺこりと頭を下げ、おやすみなさい、と小さく言ったーーーー。

 

 

 

夏と佐伯のすれ違いが描かれている。お互いただの「おとなりさん」のフリでも心を通じ合わせることができる、そんな流れ。一緒にいるときよりも、案外こういう時のほうが互いに想いを募らせ、なんだかお互いを感じることができる、ということだろう。まわりにどれだけ人がいても、結果ふたりはお互いしか見ていない、そんな想いが伝わってくるようだった。本当に“恋”なんだなぁ、と思わせられた。

次は佐伯の芝居を見に行く。“こっそり二人で会えばいい”と言った若林の言葉は、次へ続く布石となるのか、期待です。